2015年03月10日

アクシデント/意外

12本目「アクシデント/意外」
2009年香港 監督ソイ・チェン 主演 ルイス・クー

いきなり交通事故シーンから始まる本作。
衝突の瞬間、ドガシャーン!と豪快にフロントガラスを突き破る女性ドライバー。人気のない夜の路上で、路肩に突っ込んだままメラメラと炎上しはじめる乗用車・・・そこでタイトル画面に。
漢字でデカデカと書かれた「意外」という題名が目に飛び込んできます。
人ごみでごった返す白昼の路上で、たまたま上から降ってきたガラス片に当たって死んだ黒社会のボス。誰が見ても不運な事故にしか見えないその死は、実は緻密な計算のもとに遂行された暗殺だった。
連係プレーで標的を誘導し、罠をしかけ、偶然の事故に見せかけて殺すというちょっと変わった殺し屋4人組。チームのリーダーは通称「ブレイン」ことホー(ルイス・クー)。ミッションの立案と進行役で、山田孝之と高岡奏輔を合体させて醤油で煮しめたような苦み走った男前。実動部隊は「オヤジ」、「太っちょ」、紅一点の「女」の3人。
ひとかけらの証拠も残すことを許さないホーの鉄の統率のもと、数々の暗殺ミッションを成功させてきた彼らですが、とあるミッションの遂行中、標的の暗殺には成功したものの、いきなり暴走した路線バスに轢かれて「太っちょ」が死亡。「本当に事故なのか・・・?」
自分たちと同じ手口を使う殺し屋の存在を確信したホーは、今回の殺しの依頼者の身辺を洗いはじめます。保険業者のフォンが依頼者に頻繁に接触していることに疑惑を抱いた彼は、事件に関与した証拠をつかもうと、昼夜を問わない監視を続けるのですが・・・

なんと言ってもホーを演じるルイス・クーの演技が見ものです。寡黙で冷静沈着、めちゃくちゃ頭の切れる男なのですが、取り憑かれたようなその目には深く静かな狂気が宿っています。説明がほとんどないのでよくわかりませんが、冒頭の交通事故で死んだドライバーの女性は彼の奥さん。(もしかしたらホーたちの手口と同じ偶然に見せかけた殺し?)彼の精神が崩壊寸前まで病んでいることは、奥さんを死に追いやった偶然の「事故」を自分の殺しの手口にしていることからも窺える気がします。
たぶん観た人の9割が、中盤あたりでその後の展開が読めてしまうと思います。それくらいあからさまな感じではあるんですが、ちょっとお待ちください!展開が読めてしまうからこそサスペンスが生まれることもあるのです!ホーに少しでも感情移入していれば、最後までハラハラしっぱなしです。そして人知を超えた巨大な「偶然」のもたらす悲劇的結末に、深い余韻を味わうことでしょう。
posted by 竹島書店おすすめ映画 at 18:48| Comment(0) | 日記

わたしは生きていける

11本目「わたしは生きていける」
2013年イギリス 監督ケヴィン・マクドナルド 主演 シアーシャ・ローナン

≪あらすじ≫
出生時に母親を亡くし、心に傷を負った少女・デイジー。イギリスの叔母の農場に滞在することになった彼女は3人の従兄弟たちと出会う。誰とも打ち解けようとしないデイジーだったが、純朴な従兄弟たちとの交流は彼女の心を少しずつ癒していく。明るい笑顔を取り戻した彼女は、やがて従兄のエディと恋に落ちる。
しかし、穏やかな日常は一瞬で終わりを告げる。ロンドンに核爆弾が落とされ、世界大戦が勃発。デイジーたちは政府軍に拘束される。バラバラに引き離され、強制労働に従事する毎日を送るが、戦況は悪化していく。デイジーはエディとの再会の約束を果たすため、幼い従妹を連れ軍の施設を脱走。一路農場を目指すが、行く手には秩序の崩壊した世界が待ち受けていた・・・

よく「透明感がある」と言いますけども、本作のヒロイン・デイジー役のシアーシャ・ローナンほどこの形容がピッタリな人もそういない気がします。透明感があり過ぎて逆に存在感があるシアーシャさん。全体に色素が薄い感じで、透明度が高すぎて水に漬けたら見えなくなりそうです。本作中盤、死体の山を目にしたヒロインが思わずオエッとなるシーンがありますが、ゲロっているのにもかかわらず驚きの透明感をキープ!そんな人初めて見ました。
そんな「コブラ」のクリスタルボーイ並みの透明感が災いしてか、少女アサシンや幽霊、半エイリアンなど浮世離れした役柄でキャスティングされることの多いシアーシャさんですが、今回は等身大のティーンエイジャーを演じています。もちろんここでも反射率0%の透明力を発揮。シアーシャさんのクリアな魅力を存分に堪能できる作品と言えましょう。

物語は大きく分けてふたつのパートから成り立っています。前半は、凍りついていたデイジーの心が美しい自然と従兄弟たちの優しさに触れ、徐々に少女らしさを取り戻していく様子を丁寧に描写。最初パンクス風ファッションで登場したデイジーが、心の変化につれナチュラルメイクになっていく演出が効いています。
後半、いきなり核爆弾を落とされた英国は戦争状態に突入。デイジーたちも否応なく巻き込まれていくのですが、全てデイジー視点から描かれているので、なぜ戦争が起こったのか、どこの国(組織)と戦っているのかなど、最低限の背景情報すら開示されません。直接的な戦闘シーンもなし。それでもデイジーは戦争の爪痕を至る所で目にします。結構ハードというか、容赦ない描写が多いです。背景を明かさないのは意図的な演出だと思いますが、そのおかげで緊迫感もリアリティもグっと増している気がします。あと、よくわからないまま参加させられる、一般人から見た戦争の不条理さがよく表現されているように思いました。

posted by 竹島書店おすすめ映画 at 18:48| Comment(0) | 日記

2015年02月18日

ゴッドアーミー 悪の天使

ゴッド・アーミー.png
10本目「ゴッドアーミー 悪の天使」
1997年アメリカ 監督 グレゴリー・ワイデン  主演 クリストファー・ウォーケン

数千年に渡る天界の内乱に決着をつけるため、地上に降り立った天使たちが勝利の切り札となる最終兵器を巡って争奪戦を繰り広げる世紀末オカルト・ホラー・・・名だたる怪優たちが演じる、キャラの立ちまくった天使たちが強烈な魅力を放つカルト作。

神が天使よりも人間を愛し、天使に与えなかった「魂」を人間に与えたことに大天使ガブリエルが嫉妬。
そのヤキモチは天界を二分する大戦争に発展!ガブリエル率いる悪の天使軍団と、神に忠実な善の天使軍団は数千年を経た今も争い続け、もはや泥沼状態。戦況を打開するため、ガブリエルはある秘策を実行に移す。
その秘策とは、「世界で一番残虐な人間」(大量虐殺を行った米軍の大佐。故人だが魂は遺体と共に墓に眠っている)の魂を使い、最凶の戦士を創るというもの。しかし計画を察知した善の天使シモンが先手を打って魂を回収。ガブリエルの目を欺くため、無垢なネイティブアメリカンの少女の体内にその魂を隠すが・・・

あらすじだけ聞くと「天使たちが空中戦を繰り広げる超絶サイキックバトル!」的なものを想像されるかもしれませんが、全然違います。アクションもド派手な視覚効果もない。しかし!それらすべてを補ってお釣りが来るのが、天使を演じるクセ者俳優3名の強烈な存在感です!

まずなんと言ってもクリストファー・ウォーケン演じる、ダークサイドに堕ちた大天使ガブリエルがイイ味!
天使というよりヴァンパイアがお似合いな、病的に白い肌とサーチライトのような強烈な眼力の持ち主。常に飄々としていてとらえどころのない性格で、本気なのか冗談半分なのか判別できないところが逆に底知れない屈折と悪意を感じさせます。実はまだ神を敬愛していて、主人公の刑事に「人間に嫉妬しているなら、なぜ神に直接訴えないんだ?」となじられると「だって口聞いてくれないし・・・」とションボリしたりして、なぜか憎めないキャラクター。
本作には独自の「天使ルール」があり、一番印象的なのが天使特有の「座り方」なんですが、どの天使も椅子に座るときは必ず、まるで眠れる美女の枕元にうずくまる夢魔か止まり木につかまる小鳥のように、背もたれの上にちょこんとウンコ座りします。その重力の無視っぷりも含め、人外の存在であることを印象づける巧みな演出ですが、ウォーケンのような強面がやることで不気味かつコミカルな味わいに。初見、思わず吹いてしまう名場面となっています。

エリック・ストルツは穏やかで優しい善の天使シモンを好演。・・・していたんですがその印象は中盤、8歳の少女とのディープキスという衝撃のシーンですべて「変態」の一言に変換されました!一応物語上の理由(ストルツが吸い取った最凶の魂を、少女の体内に隠すため)はあるのですが、そもそもなぜ少女を選んだのかよくわからないし、仲間の天使が回収しにくるとか、その後のフォローについて手配をしている形跡もなし。もしかして、これ単に趣味で、ストさんは本物のペドなんでは?・・「バタフライ・エフェクト」でも実の娘を虐待するロリコン親父を演っていたストさんだけに黒い疑惑が湧いてくるシーンでした。

終盤に登場する堕天使・ルシファー役はヴィゴ・モーテンセン。「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンa.k.a馳夫役で有名ですが、クローネンバーグ監督作品ではマフィアとか元殺し屋といった裏街道を生きる男ばかり演じています。
本作ではそのダークな魅力が炸裂!ルシファーはガブリエルの超人兵士計画を阻止するために地獄からやってきたのですが、その理由は「ガブリエルが勝利すると天国が地獄になる。地獄は二ついらない」という縄張り意識から。基本は手出しをせず超然と事の成り行きを見守ります。退屈すると、主人公の刑事をいきなり羽交い絞めにして「毎晩お祈りを捧げているお前を見ていた。ベッドの下に俺がいないかいつも気にしてたな。・・・いたぜヒヒヒ」と気味の悪い暴露話を耳元で囁く嫌がらせをしてくることも。非常にタチの悪い雰囲気を醸し出していますが、完全に悪とは言いきれない複雑さを持ったキャラクターでした。


posted by 竹島書店おすすめ映画 at 12:07| Comment(0) | 日記