2015年05月16日

18本目「ベルフラワー」


2012年 アメリカ
監督 エヴァン・グローデル 出損  エヴァン・グローデル ジェシー・ワイズマン 

「マッドマックス2」をこよなく愛し、世紀末仕様カスタムカーと火炎放射器の自作に情熱を燃やすプー太郎に彼女ができた!・・・そしてあっという間に寝取られた!
女なんてもう・・・信じられねえ!
あまりのショックに発狂、現実と妄想の区別を失くした彼が、懊悩の果てに辿り着くのは血みどろの惨劇か、それとも・・・
フラれてから観るか、観てからフラれるか。
すべてのボンクラ男子のハートをズタズタに引きちぎる、激痛青春映画!


※ネタバレあり。鑑賞後にお読みください。











主人公のウッドローはメカには強いがシャイで冴えない青年(無職・たぶん童貞)。(監督自ら熱演!)
世紀末バイオレンスの金字塔「マッドマックス2」フリークで、特に劇中に登場するモヒカン暴走族のヘッド・偉大なるヒューマンガスの崇拝者という、精通前のピュアハートをいつまでもキープし続けるナイスガイ。
ヒューマンガスとはどんなキャラクターか?
説明しなくても男子なら了解済みであってほしいところをあえて説明しますと、まずルックスはボディビルダーのような肉体にレザーベルトを巻きつけ、ただれた頭部にホッケーマスクと鞭打ち用コルセットを装着するという独創的なファッション。核戦争後の荒廃した世界で暴虐の限りを尽す野獣のような配下たちを圧倒的な腕力とカリスマ性で統率する、まさに荒野の帝王。
大親友のエイデン(コイツも無職)も同じくヒューマンガス信者で、2人で火炎放射器を組み立てたり、「メデューサ号」と名付けたマッスルカーを世紀末風にカスタムしたりとポスト・アポカリプスの準備に余念のない毎日。
ある晩、バーでウッドローはミリーという女性に出会います。
このミリー、かなりエキセントリックな女性で、コオロギの早食い競争に参加してコオロギをわっしゃわしゃ食ってしまうような人。物語上では美人ということになっているのですが、正直どうなのか・・・ジュリエット・ルイスが三日三晩呑み続けたらこうなる顔という感じですか?
とにかくウッドローは一目ぼれ、無我夢中のアタックでデートの約束を取り付けます。
デート当日、ミリーの家に迎えに行くと、まず出てきたのはマイクという同居人。ミリーと家をシェアしているようなんですが恋人ではないらしい。でもちょっと怪しい雰囲気。
まあこの時点で悪い予感しかしませんが、恋に盲目のウッドローはミリーに告白します。「付き合ったら、絶対傷つけることになる」と断るミリーですが、「ボクが君を傷つけるかもしれないよ?」と冗談交じりに返すと「それはありえないわ」と自信たっぷりな微笑み。(ここ、伏線です)
そんなやり取りを交わしつつも結局2人はカップルになり、同棲。
ヒゲが好きなミリーのために、大嫌いなヒゲを伸ばすウッドロー。
初めてのセックスの後、「よかったよ・・・君はよかったかい?」と聞いてしまうウッドロー。
人によってはイタ過ぎて非常に悶えるというか、突き刺さる描写が続きます。
しかし幸せな日々は長くは続きませんでした。
ミリーが少し冷めたような態度を取りだしてまもなく。
出かける予定がドタキャン食らったウッドローが家に帰ってみると、例の元の同居人・マイクとミリーが道路工事のように猛烈なセックスの真っ最中!
やっぱそうなるか!観てるこっちは納得ですがウッドローは当然発狂!
「うわーーい!?」と外に走り出たところに車が突っ込んできて思い切り跳ね飛ばされてしまいます。
幸い命は取り留めたものの、頭を打って後遺症に悩まされ、最愛の彼女も失ったウッドロー。
肉体と精神のダブルで襲ってくる痛みから逃れようとあがくウッドローは、ミリーの友達のコートニーと付き合い出します。コートニーは元もと親友のエイデンが好きだった子なんですが、エイデンは特に怒りもせず、変わらない友情をウッドローに捧げ続けます。イイ奴過ぎないか?
徐々に落ち着きを取り戻すかに思われた日常ですが、ミリーが家に置いて行った荷物を返す返さないでマイクとのあいだに抗争勃発。ここから物語は急激にバイオレンス度アップ。
お互い大人気ないやり合いの後、キレたマイクがバットでメデューサ号のガラスを叩き割り、怒り狂ったエイデンがバットを奪い取ってマイクの顔面にフルスイング!マイクは死亡、エイデンは逃亡します。
直後、ミリーはウッドローを自宅で待ち伏せ、睡眠薬を嗅がせます。
目を覚ましたウッドローは、ミリーと破局した後キレイに剃り落したはずのヒゲ、大嫌いだったヒゲが顔の下半分を覆っていることに気づき絶叫。
それは、寝ている間に顔に彫り込まれたヒゲのタトゥーだったのです・・・
完全に狂乱したウッドローはミリーを襲撃。頂点に達した愛情と憎悪の果てに、訪れたのは凄惨な結末・・・・こんな終わり方しかなかったのか・・・と思った瞬間。
場面は時をさかのぼり、事故直後の虚脱したウッドローに戻ります。
そう、今までの悪夢的展開はウッドローの妄想だったのです。

フラれた直後に自分を甘えさせてくれる女性が現れたのも妄想だし、あまりにも献身的に過ぎるエイデンの行動も妄想。ミリーに対する凶行も、現実のウッドローには結局やりたくてもできないことだったわけで、ミリーが言った「(あなたがわたしを傷つけることは)ありえない」というセリフがここで効いてきます。というか、映画前半の幸せな日々も美化された思い出で、現実なのはさっきの現実と妄想の転換点、事故直後の座り込んで虚空を見つめ続けるウッドローだけなのかもしれません。

かつてマッチこと近藤真彦が「ふられてBANZAI」という素敵過ぎる題名の歌を唄っていました。歌詞はよく覚えていませんが、別れたほうが彼女のためだから、つらいけど「BANZAI」なんだよ的な内容だったと思います。まあなかなかそうも言えないのは、フラれた時のダメージの大半が自分を全否定される辛さにあるからではないでしょうか。特に恋愛慣れしていない人にとっては・・・傷ついたプライドをなんとか癒そうと、誰しも色々あがいたり、自分に都合のよい空想にふけったりするものですが、この「ベルフラワー」はそんなイタ過ぎる心の動きも容赦なく描き出しており、非常に刺さってくる作品です。猛烈で耐え難い「失恋の痛み」そのものを映画の形で表現した作品と言えましょう。

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2015年04月07日

17本目「イコライザー」


2014年アメリカ 
監督 アントワーン・フークア 出損 デンゼル・ワシントン クロエ・グレース・モレッツ

昼は冴えないホームセンターの従業員が、夜は許せぬ悪を討つ処刑人に変身!
しかしてその正体は、元CIAの凄腕エージェント!
秒単位で敵を殲滅する恐怖の殺人技!アカデミー俳優デンゼル・ワシントンが、可憐な少女を食い物にする外道どもに正義の鉄槌を下すハードアクション。


※以下ネタばれがありますのでご注意ください!




本作でデンゼルが演じるマッコール(以下、マッコさん)は、普段はホームセンター勤務のしがない従業員。物静かで穏やかな人柄で同僚たちの信頼を集めています。非常に几帳面、というか強迫神経症に近いきれい好き、整理整頓好き。毎朝ていねいに剃りあげる、皺の寄ったチョコボールのようにツヤる頭部がチャームポイント。重度の不眠症で、毎日のように深夜営業のダイナーを訪れては決まった席で読書にふけるのが日課。(その際もテーブル上の食器を自分ルールの配置に整えなおす姿が印象的)
わざわざダイナーに来て本を読む姿からはマッコさんの抱えた孤独感が滲み出すようです。深夜のダイナーに集う人たちを描いたエドワード・ホッパーの絵画「ナイトホークス」を思い出させる場面ですが、特に何か注文するわけでもなく、お湯だけもらって持参したティーバッグでお茶を飲んでいるという迷惑な客でもあります。特に文句も言われていないのが不思議ですが、人柄の賜物か、または過去になんらかのトラブルを解決してやったことでもあるのか・・・
そんなある日、ダイナーでたまに会話を交わす仲の10代の娼婦テリー(クロエ・グレース・モレッツ)が、ポン引きに殴られているところを目撃。マッコさんは単身、売春の元締めであるロシアンマフィアのアジトに殴り込み!
「カネを払うからテリーを解放してやれ」とりあえず穏便な方法でアプローチするマッコさんですが、鼻で笑う悪党たちに対し遂にその本性を解禁!
敵の人数・武装・店内の武器になりそうなものを瞬間サーチ。おもむろにストップウォッチのボタンを押し、殺戮スタート!
黒い颶風と化したマッコさんのデンゼル無双が炸裂!無駄のない機械のような動きであっというまに皆殺し完了。
「19秒か・・・」イマイチかな?と眠そうな顔で肩をすくめるマッコさん。スティーブン・セガール並みの余裕&無敵っぷりです。格好いいのですがどことなく、というか明確にサイコパスな香りが漂ってきます・・・。デンゼルのフィックス声優・大塚明夫さんが相変わらずのイイ仕事なので吹き替えも必見です。
家に帰ったマッコさん、「アーッ、やっぱ人殺しっていいな・・・」と思ったかどうか知りませんが、適度に運動した後の心地よい疲労に久しぶりの熟睡です。
実はマッコさん、元CIAで数々のダーティワークをこなした殺人のプロ。最愛の奥さんの死をきっかけに汚れ仕事から足を洗い、死を偽装してひっそりと暮らしていた・・・というよくあるパターン。この事件をきっかけに、マッコさんは街のあちこちで暴力ボランティアを開始。ある時は汚職警官をとっちめ、ある時は自分の職場であるホームセンターに押し入った強盗が奪っていった、レジのおばちゃんのお母さんの形見の指輪を取り返し・・・この際、足のつかない凶器として職場からハンマーを拝借。また売り場に戻すんですがまだ血が付いているのでフキフキしながらラックにかけて・・・って血ぐらい拭いてきましょう!その前に売り場に戻さないで〜!この辺もマッコさんの異常さが香り立つ巧い演出。なのか?
さて、おさまらないのは仲間を大量に殺されたマフィアたち。このままじゃシノギが成り立たねえ!と、本国ロシアから超一級のトラブルシューター・ニコライが送り込まれてきます。ロシアの特殊部隊スペツナズ出身で、頭の切れる冷酷なサディスト。抜群の嗅覚でマッコさんの存在を突き止め、自宅を奇襲したまではよかったがいかんせんマッコさんの力量(とサイコ度)を見誤っていた。
やすやすと難を逃れたマッコさんは、CIA時代の同僚にコンタクトし、敵の詳細情報をゲット!マフィアに対し億万倍返しとも言える反撃に出ます。
次々潰されていくマフィアの資金源。業を煮やした本国に圧をかけられたニコライは、マッコさんの勤めるホームセンターをジャックして同僚たちを人質に取り、マッコさんをおびき寄せます。
重武装のマフィア軍団VS丸腰のマッコさん。絶望的な戦力差・・・と思われましたがどっこいマッコさんの戦闘スキルはそんな甘いものではなかった!
勝手知ったる職場の中、しかも売り場には武器には早変わりするDIY商品が山ほど・・・罠をしかけたつもりが、窮地に追い詰められたのはマフィアの方だったのです。
闇に潜み、様々なトラップを駆使するマッコさんに次々と息の根を止められるマフィアたち。その様は、まるでホームセンター版「プレデター」。ほぼ一方的な殺戮に、マフィアが気の毒になってくる逆転の展開。ラスボスのニコライはそこそこ頑張りますが、最期はあり合せの材料で作ったダートガン(?)で穴だらけにされ、ジ・エンド。
しかしまあ、これだけの大量殺戮をしたらマッコさんもただじゃすまないだろう・・・職場のみんなにも正体バレちゃったし・・・と思っていたらラスト、自分ちで普通に生活していたんでビックリ。元同僚に手を回してもらったんでしょうか?ちょっと腑に落ちませんが、そこへすっかり元気を取戻し、ナチュラルメイクになったクロエさんがお礼を言いに登場。その可愛らしさに細かいことはどうでもよくなりました!
今振り返ってみると要するに「タクシードライバー」ミーツ「必殺仕事人」的な話のような・・・いや全然違う気もしますが、アクション映画としては長すぎるこの作品、解説サイトによればその冗長な部分にこそ単なる娯楽作品に留まらない深い含蓄が隠されているのだとか。色々な観かたができる作品ということなんですが、まあそんなに小難しく考えなくても十分楽しめると思います!
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2015年03月21日

16本目「フリーウェイ」

1996年アメリカ 監督 マシュー・ブライト
出演 リース・ウィザースプーン キーファー・サザーランド

オリバー・ストーン製作総指揮、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」テイストで描く現代版「赤ずきん」。スカッと爽快なハイテンション血みどろ青春コメディの隠れた傑作です。

話もおもしろいんですが、見どころはなんと言っても「24」ブレイク前夜のキーファー・サザーランドによる突き抜けた発狂演技。ジャック・バウアーとは正反対の、10代の少女ばかりつけ狙う変態殺人鬼を心底楽しそうに演じています。
そもそも当初「連鎖犯罪」という内容と1ミリもかすらない邦題でリリースされた本作ですが、「24」人気を当て込んでタイトル変更のうえ再発。もともとは違う人が吹替えていたのが、どうせならと“もう一人のジャック”こと小山力也さんを起用!このナイスな判断によりスペシャルなケミストリーが発生、「顔も声もジャック・バウアー、でも中身は変態さん」という笑撃のキャラクターが誕生したのです!ぜひ吹き替え版でご鑑賞ください!


※以降、ネタバレしていますので鑑賞後にお読みください!



自宅前の路上で立ちんぼして日銭を稼ぐ母親と、毎日のように性的イタズラを仕掛けてくる義理の父親という最低な家庭環境で暮らす女子高生ヴァネッサ(リース・ウィザースプーン)。「もーれつア太郎」のデコッ八並みの3Dなオデコの持ち主だが、容積に反比例して勉強は全くできない。
そんなどんづまりな毎日を根っからの楽天主義で明るくサバイブするヴァネッサだったが、ある日両親が警察にパクられ、自分も里親に引き取られることになってしまう。
以前引き取られた先で認知症のジイさんにレイプされそうになったことがあるヴァネさん、二度とごめんだと福祉局のオバちゃんをペテンにかけ逃走。遠くに住むおばあちゃんを訪ねることにする。
黒人の彼氏に別れを告げ、餞別に拳銃を貰ったヴァネさんは一路おばあちゃんの家を目指すが、いくらもいかないうちに車がエンコ、フリーウェイで立ち往生してしまう。
そこに現れた紳士的な物腰の男・ボブ(キーファー・サザーランド)。CTUに入る前とあって全体に締まらない感じだが、顔と声(吹替え)はジャック・バウアーそのもの。
「どうしたんだィ?」(小山ヴォイスでお読みください)と声をかけられ、事情を告げると「それは大変だったネ。途中までボクが送っていってあげるョ」と言われ喜んでボブの車に乗り込むヴァネさん。
ところが道中、ボブの正体が世間を騒がせている10代の少女を狙った連続殺人鬼であることが発覚!ヴァネさんの命も風前の灯かと思われたが、彼氏に貰った銃を突き付けて形勢逆転!
「撃たないでくれィ!ボクは病気なんだョ!お金をあげるから殺さないでくれョ!」ビビリまくりひたすら命乞いをするキーファー=小山さんの演技が素晴らしすぎてこっちの腹筋は断裂寸前!
なにしろ小山さんと言えばジャックとか「ウォーキング・デッド」のダリルとか男前なキャラクターばかり演じているイメージ。こんなみっともない役はかなり珍しいのではないでしょうか。
人気のない空き地に車を止めさせたヴァネさん、銃を突きつけたまま「アンタ神様ってホントにいると思う?」「なんだィその質問は!?怖いこと聞かないでくれョ〜(泣)」小山さんの演技が巧すぎてなんか本当にかわいそうだな〜と思った矢先、そんなことを露ほども思わないヴァネさんの銃が容赦なく火を吹く!
首筋から血を噴き出して倒れるボブ。一仕事終えたヴァネさんは腹が減ったので深夜営業のダイナーに行くが、返り血を浴びて真っ赤だったので即通報され、お縄に。
「あいつは殺人鬼なのよ!これ以上犠牲者が出ないようにやっつけてやったのよ!」と主張するヴァネさんだが、誰も信じてくれず少年院送りに。
罪状は殺人未遂・・・未遂。そう、どっこいボブは生きていた!
実は奥さん(ブルック・シールズ)もいるかなりの資産家だったボブ、手術で命は取り留めたものの顔が変形し、昔のコントによくある釣り針がほっぺたにひっかかった釣り人みたいなファンタスティックなご面相になってしまった。あんまりにもあんまりなビジュアルなのでこれだけでも一見の価値あり。何か言うごとにフガフガしてよだれをダーッと垂らしながらも執念深く復讐の機会を窺うボブ。
一方ヴァネさんは貼りつけたような笑顔が怖い院長の監視のもと更生の毎日を送っていたが、スケ番に絡まれて反撃、ボコボコにする。少年漫画のように友情が芽生えた2人は協力して脱獄。ヴァネさんはもともとの目的地、おばあちゃんの元に向かうがそこにはボブが待ち受けていた・・・!

ブラック過ぎて確実に人を選ぶと思いますが、観て損はないと思うのでオススメします!
posted by 竹島書店おすすめ映画 at 00:19| Comment(0) | 日記