2015年02月18日

ゴッドアーミー 悪の天使

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10本目「ゴッドアーミー 悪の天使」
1997年アメリカ 監督 グレゴリー・ワイデン  主演 クリストファー・ウォーケン

数千年に渡る天界の内乱に決着をつけるため、地上に降り立った天使たちが勝利の切り札となる最終兵器を巡って争奪戦を繰り広げる世紀末オカルト・ホラー・・・名だたる怪優たちが演じる、キャラの立ちまくった天使たちが強烈な魅力を放つカルト作。

神が天使よりも人間を愛し、天使に与えなかった「魂」を人間に与えたことに大天使ガブリエルが嫉妬。
そのヤキモチは天界を二分する大戦争に発展!ガブリエル率いる悪の天使軍団と、神に忠実な善の天使軍団は数千年を経た今も争い続け、もはや泥沼状態。戦況を打開するため、ガブリエルはある秘策を実行に移す。
その秘策とは、「世界で一番残虐な人間」(大量虐殺を行った米軍の大佐。故人だが魂は遺体と共に墓に眠っている)の魂を使い、最凶の戦士を創るというもの。しかし計画を察知した善の天使シモンが先手を打って魂を回収。ガブリエルの目を欺くため、無垢なネイティブアメリカンの少女の体内にその魂を隠すが・・・

あらすじだけ聞くと「天使たちが空中戦を繰り広げる超絶サイキックバトル!」的なものを想像されるかもしれませんが、全然違います。アクションもド派手な視覚効果もない。しかし!それらすべてを補ってお釣りが来るのが、天使を演じるクセ者俳優3名の強烈な存在感です!

まずなんと言ってもクリストファー・ウォーケン演じる、ダークサイドに堕ちた大天使ガブリエルがイイ味!
天使というよりヴァンパイアがお似合いな、病的に白い肌とサーチライトのような強烈な眼力の持ち主。常に飄々としていてとらえどころのない性格で、本気なのか冗談半分なのか判別できないところが逆に底知れない屈折と悪意を感じさせます。実はまだ神を敬愛していて、主人公の刑事に「人間に嫉妬しているなら、なぜ神に直接訴えないんだ?」となじられると「だって口聞いてくれないし・・・」とションボリしたりして、なぜか憎めないキャラクター。
本作には独自の「天使ルール」があり、一番印象的なのが天使特有の「座り方」なんですが、どの天使も椅子に座るときは必ず、まるで眠れる美女の枕元にうずくまる夢魔か止まり木につかまる小鳥のように、背もたれの上にちょこんとウンコ座りします。その重力の無視っぷりも含め、人外の存在であることを印象づける巧みな演出ですが、ウォーケンのような強面がやることで不気味かつコミカルな味わいに。初見、思わず吹いてしまう名場面となっています。

エリック・ストルツは穏やかで優しい善の天使シモンを好演。・・・していたんですがその印象は中盤、8歳の少女とのディープキスという衝撃のシーンですべて「変態」の一言に変換されました!一応物語上の理由(ストルツが吸い取った最凶の魂を、少女の体内に隠すため)はあるのですが、そもそもなぜ少女を選んだのかよくわからないし、仲間の天使が回収しにくるとか、その後のフォローについて手配をしている形跡もなし。もしかして、これ単に趣味で、ストさんは本物のペドなんでは?・・「バタフライ・エフェクト」でも実の娘を虐待するロリコン親父を演っていたストさんだけに黒い疑惑が湧いてくるシーンでした。

終盤に登場する堕天使・ルシファー役はヴィゴ・モーテンセン。「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンa.k.a馳夫役で有名ですが、クローネンバーグ監督作品ではマフィアとか元殺し屋といった裏街道を生きる男ばかり演じています。
本作ではそのダークな魅力が炸裂!ルシファーはガブリエルの超人兵士計画を阻止するために地獄からやってきたのですが、その理由は「ガブリエルが勝利すると天国が地獄になる。地獄は二ついらない」という縄張り意識から。基本は手出しをせず超然と事の成り行きを見守ります。退屈すると、主人公の刑事をいきなり羽交い絞めにして「毎晩お祈りを捧げているお前を見ていた。ベッドの下に俺がいないかいつも気にしてたな。・・・いたぜヒヒヒ」と気味の悪い暴露話を耳元で囁く嫌がらせをしてくることも。非常にタチの悪い雰囲気を醸し出していますが、完全に悪とは言いきれない複雑さを持ったキャラクターでした。


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バタフライ・エフェクト

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9本目「バタフライ・エフェクト」
2004年アメリカ 監督エリック・ブレス J・マッキー・グルーバー 主演 アシュトン・カッチャー

この映画、エンディングが計4つあることで知られていますが、劇場公開版のエンディングが一番ではないでしょうか。伏線のひとつ(結構デカいの)が未回収になってしまう欠点があるのですが、他のエンディングにはない深みがあります。劇場公開版がベスト。それを踏まえてどんな人におすすめしたいかというと、「失恋したばかりでまだ吹っ切れないでいる男性」に是非観ていただきたいのです!もう未練たらったらの人に! めちゃくちゃ苦いですが、きっと何よりも良く効く薬になるはずです!どういう意味かは実際に観てお確かめください。あと、カップルで観るのもいいかもしれません。・・・今後のために。

少年時代、原因不明の意識の途絶を何度も体験したエヴァン。大人になった彼はふとしたきっかけで当時の日記を読み返し、過去の自分にタイムスリップする。記憶の欠落は、未来の自分が体に入り込んだのが原因だったのだ。そこで目にした光景に衝撃を受けたエヴァンは、疎遠になっていた幼なじみで初恋の相手・ケイリーに会いにいくが、その行動は思いもよらない悲劇を招いてしまう。ケイリーの運命を変えるためにタイムトラベルを繰り返すエヴァンだったが、過去の改変によって引き起こされる「バタフライ効果」は、彼の予測を遥かに超えていた・・・


タイムトラベルSF+青春ラブストーリーの名作として知られる本作ですが、10年前の作品なので意外に観ていない人も多いのでは?
というか筆者自身が初見だったのですが、なぜ今まで観なかったのか後悔するくらいの面白さ!タイムトラベルものといえば冒頭からビッシリ伏線が張られていることが多いジャンルですが、本作は伏線の仕込み方もさることながらその回収の仕方が非常にうまい。解説サイトなどではいくつか矛盾も指摘されているようですが、言われてみればそうかと思うくらいのレベルなので、普通に楽しむにはなんら支障はないと思います!

バタフライエフェクト(バタフライ効果)とは、カオス理論を説明する時によく使われる用語で、些細な出来事が予測もつかない大きな事態につながることがあるというような意味・・・だったと思います。日本で言うところの「風が吹いたら桶屋が儲かる」という奴です!ネットで調べると、語源として「北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐が起こる」というたとえ話が書いてあるのですが、ずいぶん前に何かで目にした時は前半が同じで後半が「ロンドンで株が暴落する」になっていました。いろんなヴァージョンがあるようですが、個人的には予測不能な感じが一番出ていて好きです。
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2015年02月02日

カレ・ブラン

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2011年フランス 監督ジャン=バティスト・レオネッティ 主演 サミ・ブアジラ

冷徹な企業論理が支配する超管理社会。苛烈な生存競争から落伍した者は食肉にされ、製品として供される。労働力確保と食料供給のため、子作りが奨励される一方、子供を隠すことは重罪とされていた。
人肉加工工場で働いていた女性が、突如として職場を放棄、投身自殺する。死の直前、彼女が一人息子のフィリップに言い残した言葉は「怪物に見つからないように、心を隠して生きろ」だった。孤児院に収容されたフィリップは首吊り自殺を図るが、同じ孤児の少女マリーに救われ、一命を取り留める。しかし、回復したフィリップを待ち受けていたのは残酷な生存テストだった。「袋に自ら入るものには、生きている価値がない」フィリップの心に容赦のない教訓が刻み込まれる。
成人したフィリップは、マリーと結婚し、一流企業の人事部長の座に就いていた。従業員に「実験」と称する心理ゲームを課し、不要な人材の選別を行う毎日。冷酷さを自覚せず、淡々と業務をこなす夫の姿に、マリーの心は冷え切っていた。そんなある日、夫婦はある事件がきっかけでひとりの老人と知り合うことになる。彼はフィリップの会社の駐車場の警備員を務めるパトリスだった。パトリスとの出会いを通じ、徐々に人間らしさを取り戻していくフィリップだったが・・・

今までご紹介した映画の中で一番マイナーで、正直!万人受けする内容ではありませんが、この映画で描かれているディストピア像は決して絵空事ではなく、現代を生きる我々すべてに痛烈に突き刺さってくるものだと思います。多少眠たくても我慢して、まぶたの上にメンタムを擦り込んででも観ていただきたい!
以下、ネタばれがありますのでご注意を!


食人というとホラーみたいですが、これは我々自身の生活が弱者の犠牲の上に成り立っていることのメタファーであること思われます。死んだ人間はすぐ回収されてミンチにされるんですが、その過程は全く描かれません。この辺も、自分の食っているものがどんな風に作られているかほとんど知らない現代人(もちろん筆者も)に対しての皮肉になっている気がします。
あと、食人ネタというとすぐ頭に浮かぶのは某有名SF映画ですが、本作のそれは決して食糧危機などの必要に迫られた行為ではなく、効率至上主義がもたらした「せっかくだから食べようか。MOTTAINAI!」程度のノリなところが非常に怖い。人肉料理には本作のトレードマークである「白い四角(カレ・ブラン)」を人型に組み合わせたマークがプリントされた、お子様ランチの旗のようなものが目印に刺さっていて、最初見たときは「ああ、これは人肉食べたくない人が間違って口にしないようにしてるんだな」と思いましたが、多分これ全く逆で・・・品質保証のマークですよね・・・「100%人肉!」みたいな・・・
さて、本作の中でたびたび言及される「怪物」の正体とはいったいなんでしょうか?
フィリップ・K・ディックが「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」で痛切に描いていたように、「他者への共感」は人間が人間である上で最も大切なものだと思います。しかし、同時に最も脆く、儚いものなのかもしれません・・・
フィリップの母親やマリー、パトリスが目にする「怪物」とは、徹底した管理社会のなかで他者への共感どころか想像力の一切が麻痺し、しかもそのことを全く自覚していない人間たちのことです。彼らはパブロフの犬のように条件反射で生きているだけで、明らかに異常な社会の在り様に対しても全く疑念を持たず、平然と人肉を食って生きています。特別な存在ではなく、むしろ社会のなかで圧倒的なマジョリティを占める「普通の人間」なのです。
ごく少数の人間だけが、その「怪物=普通の人間」に気づき、取り込まれないように必死で心を隠しながら生きているのですが、主人公のようにだんだん麻痺していく者もあり、耐え切れずに死を選ぶ者もいて、世界から「他者への共感」がどんどん失われていく・・・時折挿入される謎のカウントダウンの意味はそういうことらしいです。フィリップの奥さんのマリーはそんな状況のなかで、なんとか夫の「他者への共感」を取り戻そうとしている。絶望的な状況に生きる夫婦の切ないラブストーリーでもあるわけです!
SF的ガジェットが一切登場しないのにも関わらず、悪夢的近未来を体感させる独特の映像美も見事。
体力のある時に、ぜひご鑑賞ください!







posted by 竹島書店おすすめ映画 at 11:26| Comment(0) | 日記